特集:山下商店街を楽しむ!
No.00047
2017.03.11更新
『縁があって山下! 人も町もあったかい』〜若手店主との座談会(前編)

小田急線・豪徳寺駅と世田谷線・山下駅が交差する「山下商店街」は、こじんまりとしてどこか懐かしい雰囲気が漂う町並み。

60余年の歴史があり、小さな和菓子屋や果物店、おもちゃ屋……など古き良き店が軒を連ねる中に、若い息吹の新規店も少しずつ増えています。

今回は、手打ち蕎麦屋「あめこや」の上田ご夫妻、ビンテージウォッチ店「エルオクロック」の秋山さん、手相・タロット占いの「占い東風(こち)」さんに、町の魅力、商店街や人びとへの思いをたっぷりと語っていただきました。

※3人のプロフィールはページの一番下に載せております。

――なぜ商店街に、出店しようと思いましたか?

あめこや・上田:うちは手打ち蕎麦屋なので、「自分が蕎麦を打っている姿を通りがかりの人たちに見てほしい」というのが、構想の中にありました。店を出すにあたっての第一条件は、路面店で、人通りがある場所でした。

占い東風(こち):小さいスペースで、1階の物件を探していました。実は、紹介されるまで豪徳寺は知らなくて! この辺りの商店街や住宅街を1日かけてぐるっと見て回ったら、人波が温和な雰囲気でいいなぁ、キャッチもなくて、いやなイメージが全くない‼ すごくいい町、豪徳寺で働いてみたいって、もう直感で決めました。あとは、元・エルオクロックさんのお店があった場所で、繁盛していたって言うのも決め手ですね。それと、偶然なんですけど、向かいの「スタジオ豪徳寺」のマスターが、僕の両親と同じ熊本県玉名市出身で! とてもかわいがっていただいています。

エルオクロック・秋山:もともと、会社員時代にこの緑道近くに一人暮らしだったんです。豪徳寺でもよく飲んでもいて、各駅停車なのに意外と活気があっておもしろい店も多くて、いい町だなとずっと思っていました。その後、転勤で福岡へ。半年後に東京に戻ってきましたが、偶然にも以前と同じ部屋が空いていたので、またそこに住みました。ホントに不思議なご縁があって、呼び戻されたのかも。独立をめざしていたので、最初は勤めながら小さな修理スペースを探して、2013年4月に今の東風さんの場所で始めたのがはじまりです。移転を考えた時も豪徳寺以外は頭にはなくて……。2015年7月、現在の場所で改装オープンしました。人もいいし、おもしろい町なので、結果的には豪徳寺でよかったと思っています。

――みなさん、ほかに候補はありましたか?

秋山:下北沢ですね。商店街ではなくて、商圏として店を出そうと思っていましたが、家賃が高くて……。

上田:僕も下北沢の近くに長く住んでいたので、下北沢界隈かその周辺がいいなぁと思っていました。ただ、路面店だとどうしても高くなるので、予算の都合で私鉄沿線の各駅を探していました。10数年前は、物件がそれほどあるわけではなくて、気に入ったらすぐ申し込むのが普通だったんです。気になっていた経堂の地下1階の店舗は、紹介してくれた不動産屋さんが「ここは暗いから、夫婦ふたりでやるのは止めた方がいい。隣の豪徳寺に物件が出たから、ちょっと見てみましょう」と。で、今の場所を一緒に見ながら「悪くないね」と背中を押してもらって、とんとん拍子に決まりました。

――あめこやさんって、おもしろいスペースですよね。

上田奥さん:もともと不動産関係の事務所で、内装もやっていたようです。コピー機も残っていたような事務所の居抜きだったんです。

上田:おもしろいので、このままうまく使おうと思いました。蕎麦打ちスペースは確実に欲しかったので、割と広いスペースを狙っていました。今の店は、17坪くらいありますね。

東風:蕎麦打ちスペースは、上田さんが作ったんですか?

上田:仕切りは作りましたが、ガラスや扉も全部そのまま前の人たちが残していて。本当にそのまま使っているんですよ。

秋山:まるで、あめこやさんのために作られたような!?

上田:そうですね! この町には、自由な雰囲気があるので……。うちも型にはまらず、自由な蕎麦屋でいいんだ!って思うようになりました。

秋山:豪徳寺って、お客さまも自由な人が多いですよね。

上田:確かに!若い人からお年寄りまで、今まで会ったことのないような……。

秋山:これで生きていけるんだなぁっていうか、変わった方が多いですよね。変な話、東風さんも占い師で食べていけるんだなぁとか。

東風:変わっている職業ですからね(笑)。

――東風さんは、どこか候補に考えているところがありましたか?

東風:自由が丘は家賃が高いので、ネイルサロンとシェアしてもいいかなと考えた時も。でも、占いはプライベートな秘密の話が多いのでやめました。僕は千葉に住んでいるので、高田馬場や中央線沿線で探していましたが、まさかの小田急線! 最初は、お店が通りに面していないので、どうかな…と思っていましたが、ちょっと奥まった所だからこそ、占いに適しているって思い始めました。緑道に面しているのも気に入っています。

秋山:うちは、もともと東風さんのところで店をやっていたから、わかるんですけど。豪徳寺の人たちって、こういう奥まった、何やっているんだろうって言う場所に全く抵抗がない。覗いてみようって好奇心のある人たちが多いですよね。お店に行き慣れているっていうか。まさか、ここで時計の修理をしているとは思わないけれど、覗いちゃう? なんて言える敷居の低さがいいですよね。

東風:仕事柄、占いにいらっしゃる方の職業を必ず伺うんですけど。映画監督とか、アーティストとか……ちょっと変わった職業の方が多いですね。このまえは、90代のお年寄りがいらして「長生きしますか?」って。本当に長生きの手相だったので、「まだまだ100歳まで問題ないですよ」って伝えると、安心して帰られました。

――あめこやさん、エルオクロックさんには、どんなお客さんがいらっしゃいますか?

上田:うちは、食に興味のある方が多いです。地元はもちろんですが、沿線の方も‼ お客さまとのつながりで、山菜を作っている人や生産者を紹介してもらったり、蔵元さんが来てくれてそこのお酒を店で出すことになったり。この近くに地酒専門店があるので、お酒や蕎麦のご縁で来店してくださる方もいますね。

秋山:うちは古い時計やぜんまい時計が多いんですけど。60、70代くらいの普段着の男性が、高価な時計をさらっと買っていくというのも特徴ですかね。

――各駅と急行、豪徳寺から下北沢寄りと経堂の先は、雰囲気が違いますよね。

上田:たしかに、豪徳寺から下北沢寄りは独身や新婚さん、経堂から先はファミリー層が多いですね。10年ほど店を構えて思うんですけど、引っ越して新しくお客さまになってくださる人、お子さんができて郊外に引っ越した人……常連やファミリー層だけじゃなくて、常にいろいろな人が循環して来店してくださる雰囲気はありますね。

上田奥さん:あとは、80代、90代の元気なお年寄りも多くて、お仲間や家族で食事に来ていただけるのはうれしいですね。最近は、寺巡り、猫好きのご年配の女性グループもネットで調べて、あと外人さんもいらっしゃいます‼ 息子さんや娘さんが近くに住んでいるので、親世代の人たちが興味あって来てくださることもあるんですよ。

――出店する前と後の印象は、変わりましたか?

秋山:もともと住んでいたこともあって、おもしろい感じがそのまま延長している感じです。あまり印象は変わらなかったですね。

東風:豪徳寺には占いのお店がなかったので、お客さまがたくさんいらっしゃったらどうしようって心配していたんですけど……ちょっと期待外れでした。占いっていうと、新宿に行く方が多いんですよね。

上田:確かに、買い物や食事は都内で済ませる方も多いですね。だから、うちでは都内と同じクオリティをリーズナブルに提供しています。新宿寄りはなかなか厳しいですけど、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵のお客さまが、途中下車して来てくださるのはうれしいです。

東風:うちは、エルオクロックさん効果があって! 「昔、ここにエルオクロックさんがあった時に、よく来ていたんですよ。今どうなっているかな〜?」なんて親近感を持って、占いに来てくださるお客さまが多くてとっても助かっています!

秋山:あの細くて暗い通路を通って、お店に入ってくれるのは、興味がある人じゃないと‼

上田:5年前にエルオクロックさんがお店を出して、若いお客さんが増えて。その後に、東風さんが入って、行ってもいいんだって少しずつ変わってきましたよね。

秋山:あの通路って、ちょっと怖いイメージだったから、小さい子が嫌がりませんか?

東風:そうですね。昨年12月にクリスマスツリーをお店の外に飾っていたら、「お母さん、こっち通ろうよって」子どもがお母さんの手を引いて来てくれることも。少しずつ慣れてきたっていうか、怖くないって実感してくれているかなって思っています(笑)。

秋山:緑道が工事中ですけど、完成したらお客さまが来てもらえそうですね。

東風:緑道にも看板を出そうと思っています。あの道を知っていると、地元通っていうか、自慢っていうか。この前も、男性ふたりがこの前を歩いていて、「何この道!? こんな所があったんだ‼」「俺、地元だからさ」なんて会話が聞こえてきて、にんまりしました。

上田:近道だから、東風さんに寄ってもらえるかもしれませんね。

――山下商店街に出店して、よかったことは?

東風:僕は、たくさんあります! あめこやの上田さんや女将さん、秋山さん……僕と同世代の人が多くて。この前も、フェイスブックとワードプレスを連携したら? ってアドバイスいただいて、検索が上がってすごく助かりました。商店街の店主って、おじさんばかりで口うるさいイメージだったんですけど。ご近所の「室まち」さんから「ちょっと余分に作ったから食べて」と差し入れがあったり、「スタジオ豪徳寺」のマスターから「昼間はうちの所に、看板出していいよ」って声を掛けてもらったり…。60、70代からもかわいがってもらえるなんて、コミュニケーションが取れていい商店街だなぁって実感しています。

秋山:上田さんや東風さんから、時計を買っていただいたり。この前は「代一元」さんが撮った鉄道写真展をうちで開催したり。

――その鉄道写真展は、何かきっかけがあったんですか?

秋山:もともと「代一元」さんが、鉄道好きっていうのは知っていたんです。

上田:年賀状に、自分の苗字と同じ駅で息子さんとの写真を載せたりね!

秋山:鉄道時計フェアを開催した時に、今度一緒に何かやりませんか? ってお誘いしたら、鉄道写真を撮っているって。鉄道写真展をやりました!

――あの店構えだと、鉄道ファンだってわかりませんよね?

秋山:鉄道仲間の中では、知る人ぞ知るお店みたいですよ。奥さんとのデート話はおもしろいので、ラーメンを食べながらぜひみなさん聞いてみてください!

上田:意外な話が聞けますよ。

秋山:メカニカルが好きな人って、時計と鉄道とか、時計とカメラって共通点があるので、うちではお客さんが広がったと思います。

東風:占いに来るお客さまは、動物好きな方が多いです。豪徳寺っていう場所柄からか、猫好きな人も多いでんですよ。

秋山:この先に、小鳥専門の病院があって、鳥好きな人も多いですね。

上田:鳥かごを持ってウロウロしている人から、何度も道を尋ねられたことがありますよ。

――そういう意味では、マニアな人が来る商店街ですよね。

秋山:そうそう、スポーツ好きの友だちからも聞いたんですけど、「高橋接骨院」は有名です。ガタイのいい人たちがよく来ていますね。女性だと「八木整骨院」派も多いです。

東風:そういう意味では「若石足療もんでチャイナ」さんファンも、占いに来ますね。

[後半に続く]
※2017年3月下旬に掲載予定です。

【写真 中央】あめこや 上田善宗(うえだ・よしむね)
手打ち蕎麦を楽しめる店として、2006年9月にオープン。地元の家族連れや蕎麦・日本酒好きなど、おいしいもの好きに親しまれる。店名は、「木の家具が使い込んで飴色になるよう、味わい深い店に」…と願いを込めて命名。レトロな内装は夫婦で手作り。

【左】L’oclock(エルオクロック) 秋山直人(あきやま・なおと)
1960〜70年代の「気軽なカジュアルビンテージウォッチ」を取り揃えるセレクトショップとして、2013年4月にオープン。若い世代から60、70代まで幅広い層から支持を集める。季節に合わせたイラスト展やクラッシックカメラセールなどの企画も!

【右】占い師・東風(こち)
手相、タロット、四柱推命、九星気学を中心に占い、2015年9月にオープン。やさしい笑顔と温和な人柄で人びとを包み込む。日頃の悩みや迷い、人生の岐路に立つ時、そっと背中を押してくれる。1972年生まれ、千葉市出身

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